不定期連載ノベル・第5回

 こちらは当ブログ開設3周年記念企画・不定期連載ノベルっぽいものの第5回です。これまでの展開はカテゴリ「三周年記念企画」でご覧になれます。
 というか、これほんと拙い知識と経験でしか書いてませんもので、実際どうなんでしょうねえ。お楽しみいただけていれば嬉しいのですけど、今に至るまで反響ほとんどなっしんぐ…
 …ま、まあ、好きで書いていると言う事で、平にご容赦を。

 それでは、どうぞご覧くださいませ!
.

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

「ひななな-湘南神姫、かく戦えり-」第5回

 ストラーフを襲った、その予想外の一撃。それは後方斜め上から勢い良く飛び込んできた、茶褐色の風だった。
 それは明らかに、目の前のシュメッターリングによる件の超機動攻撃ではない。岩場の構造上、相手が取り得る突撃コースのいずれにも合致していないし、そもそも相手は今仕掛けてきてさえいない。
 では、今のはいったい何だったのか?
 疑問を感じつつ上空を仰ぎ見れば、茶褐色の大きな鳥が数羽ほど、輪を描くようにして滑空しつつこちらを窺っているようであった。
 『む。キミの技ではなかったか……』
 『全然違うよ!っていうか、トビを知らないの?』言葉を返すシュメッターリングもまた同じように、今しがた茶褐色の侵入者を回避したばかりである。

 “トビ”というキーワードから、ストラーフは瞬時にその正体を検索し、そして解明する。
 別名トンビ。タカ目タカ科に属するれっきとした猛禽類であるが、狩猟にのみ頼る事のない雑食性の鳥でもあり、特にこの湘南界隈においては人間が手にしている食べ物等を奪わんと襲ってくる害鳥として悪名高い。
 検索結果によれば、食べ物を奪われるのみならず、その際爪を立てられた事で人間が怪我をするという被害例すらあるようだった。
 人間をしてこうなのだから、身の丈僅か15cmほどしかない神姫にしてみれば、更に巨大な脅威であろう事は明白。言うまでもなく神姫は食べ物などではないのだが、所詮相手は鳥風情、そこまでの分別などおおよそ望むべくもない。
 『……いや、今理解した』
 かくして2人の神姫は、今や互いのバトルどころか、トビの攻撃に対処する事を余儀なくさせられたのだった。

 電送の光と共に、ふたりはそれぞれの武装を纏う。ストラーフは巨大な副腕に大剣と大型拳銃を携えた重厚な闇色の甲冑を、シュメッターリングはそれより格段に小さな、純白を桜色で彩った強化ドレスを。
 実のところ、彼女たちの武装には一部似通った部分もあるのだが、それを指摘する余裕など互いにあろうはずもなく、背中を合わせて上空の“敵”に備えるのみ。
 『それで、どうする?』『追い払うだけ。っていうか、あたし達が場所を変えればいい』
 『……つまり、ここを切り抜けるだけでいいのだな。理解った』ストラーフは言うなり大型拳銃を腰部に仕舞い、くるりと大剣の刃を回す。
 峰打ちとすれば、たとえ直撃したとて相手の命に別状はないだろう。鳥といえども生き物であるから、ロボットであるところの自分たちが殺傷行為に及ぶのはよからぬ事である、という認識だ。
 かつてロボット達に対して定められた行動原則は、100年以上を経た今なお生きていた。

 かくて武装を展開した2人だが、それでも上空から次々と襲撃してくるトビ達から逃れおおせるのは、至難の業といっていい。人間にしてみれば走って去れば充分であろう距離にしても、神姫であるところの彼女たちが同じ行動をとるには、相対的に見て長すぎるのだ。
 自然、襲撃のタイミングに合わせて反撃を仕掛け、「自分たちに触れる事が危険である」と言う事を示して退散願う事を繰り返すしかない。

 『はっ!』『ちょわっ!』トビどもが急降下する度、地上に閃く蒼色と桜色の閃光。
 ストラーフの峰打ちを脚に喰らった一羽が、たまらず上空に避難するが、他のトビ達にはその理由など理解できようはずもない。
 繰り返すが、所詮は鳥である。
 次なる襲撃を退けたのは、シュメッターリングのレーザーソード。まともに受けた一羽は一瞬あらぬ方向によろめき、また上空へと飛び去った。
 『……スタンブレードか』ストラーフはそれを見て、瞬時にその正体を察する。
 レーザーソードの別の使い方として、出力を絞り電撃を放出するというものがある。主に神姫同士の模擬戦で使用されるが、暴漢の撃退にも応用できると言う事で、女性や幼児、老人をオーナーとする神姫に所持率が高い武装でもあった。
 と言う事は、かの神姫のマスターはそのいずれかと言う事になるが、ストラーフにとってそこは然程重要な事ではない。
 『もしかしてキミは、最初から……』蒼い髪の神姫がそう言い掛けたのを、シュメッターリングは遮る。
 『あそこに滑り込もう。狭いところなら、あいつらは手出しできない!』トビを威嚇すべく振り上げたスタンブレードの向こう、入り組んだ岩場の陰を彼女は指差す。
 『……わかった』今一羽を上空へと追い払いつつ、ストラーフはそれに続いた。

 武装を送り返し、岩場の陰に潜り込んで数分。
 最初のうちこそ沈黙を貫く両者だったが、それを破ったのはまぎれもなく、より小さな方の神姫であった。
 『ずっと前、あいつらに空まで攫われた事があってね。あの時は、脱出するのに苦労したよ』
 『その時も使ったのか、それを』『ううん。まだこれはなくてね、直接ぶっ叩いた。後で、いろいろ大変だったけど』
 いまだに手にしたハーモニケインとやらを手に、ぺろりと舌を出すシュメッターリングからは、言葉通りのニュアンスがあまり感じられない。過去の事とは言え、自身の一大事を笑い話にしてしまうとは、いったいどういう思考の下でそのような結論に至れるものなのか。
 『変なヤツだな、キミは』溜息ひとつ、ストラーフは上空を見やる。
 狩猟を諦めたトビたちは、あっさり上空から去っていた。もとより観光名所である江ノ島の事。餌として狙えるものは他に山程その辺に溢れているのだから、無理もない話である。

 念のためそれからも暫く身を潜めた岩陰から、再びその上に場を移し、改めて2人の神姫は向かい合う。
 『……で、続ける?』
 『いや、やめておく。キミはもう、満足に戦える状態じゃないだろう』
 『あは。ばれてた?』
 『今更しらばっくれるな。そのボディを見れば良く分かる』
 実は先程、岩陰で共に隠れている間、ストラーフは目の前のバトル相手を細やかに観察していた。
 陽気に振舞ってこそいるものの、服の隙間から垣間見えるそのボディフレームは至る所傷だらけ。いずれも機能を発揮するにはとりあえず支障が出ないレベルにまで補修されてはいるものの、それだけの傷を負わされる程の戦いをいまだ経験していないストラーフからすれば、軽く見た目の“少女趣味”と相俟って、寧ろ異様さすら感じさせられるレベルであった。
 更にストラーフが注目したのは、関節部分である。神姫はその小さなボディに一定の強度を保つ都合上、金属軸を持つ特殊な関節が使われており、それが外見上の大きな特徴ともなっているのだが、その軸廻りが僅かながら黒く焦げている。
 それは間違いなく、先のバトルで過大なパワーを出し続けた代償であり、もしあのまま戦い続けていたら、このシュメッターリングは間違いなく軸部分からフレームにダメージが広がり、最後には自壊していた事だろう。
 『……そんな状態で、よくこの私に戦いを挑んできたものだ』賞賛とも呆れともつかない言葉が、ついつい出てきてしまう。
 『そりゃあねえ。ざっと見た感じ、起動してまだ日が浅そうだったし、何より“誰でもいいから戦いたい”って顔をしてたからね』
 『……む。そこまで解っていたのか』
 『まぁね。似たような子を、何人も見てるから』
 『そうか』と、ストラーフは得心しつつも言葉を返す。おそらく目の前の“少女趣味の神姫”は、軽々しくバトルと呼ぶにはあまりに過酷な修羅場を数多く経験してきたのであろうし、その中には自分と同じストラーフ系神姫との対決も含まれていたのだろう。
 今となっては、あの立ち回りの中で自分が一度も攻撃を当てられなかったのにも納得がいく。ストラーフ系にプリセットされた“定石”とも言える戦闘機動が、最初から全部把握されていたのだとするならば。
 そして、今の短い言葉には実のところ、ストラーフ自身のささやかな葛藤も含まれている。
 既に“全部お見通し”に限りなく近い状態で何を今更とは考えながらも、それでもこれ以上弱みを見せたくないという思いもまた抑えがたく、結果として目の前の相手に対する気遣いの言葉が、なかなか出なかったのだ。
 ただ、そうした葛藤をひとまず置きやって『傷は大丈夫か?』とだけ聞いてみた。
 『なぁに、このくらい慣れっこ慣れっこ。またマスターに治してもらうよ』屈託なく微笑み返す様は、まるでやんちゃを繰り返す餓鬼大将のようである。
 『……本当に変なヤツだな、キミは』ストラーフは、愛刀を収めながら苦笑するしかない。
 正直、ダメージの蓄積が原因で行き倒れなどという事態になったら寝覚めが悪い事この上なかったのだが、ひとまずその心配はなさそうだったし、神姫として“マスターに治してもらう”という言葉には、流石のストラーフにも抗いがたい程のこそばゆさが感じられたからである。

IMGP3390.jpg
 『何度も言ってくれるよねぇ。ま、よく言われるんだけど』
 『……そんなに言われているのか』本日何度目かの、呆気に取られたストラーフの顔である。
 『うん。でも……どんなに変だと言われても“伊達と酔狂”に生きるのが、あたしとマスターのやり方だから』
 『伊達と、酔狂……?』『そ。分かりやすく言えば“無駄を楽しむ”っていうのかな』
 怪訝顔で聞き返すストラーフに、シュメッターリングは朗らかな微笑をもって返す。
 『……“無駄を楽しむ”、か』その言葉の意味は兎も角として、その意義は今のストラーフには少々理解りかねる。起動後然程日を得ない身としては、無理もないのだが。
 しかしながら、同僚たちが碌々バトルもせずに割とうまくやっていけているのは何故なのか?という日頃から抱いていた疑問については、少しだけその答えが理解ったような、そんな気もしたのもまた事実だった。

 余談ながら、彼女がそれを本当に理解できるようになるのは、この時点からずっと先の事である。

【おことわり】
 この物語はフィクションです。実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
 また、この物語は「武装神姫」シリーズ関係の二次創作物であり、同シリーズの公式設定等を基にしてはおりますが、作者の解釈により若干の差異の生じる可能性がありえます。
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

翠騎

Author:翠騎
日々を趣味の探求に生きる旦那芸の人。

神姫オーナーとしてはパートナーのシュメッターリング3rd改「ナナ」を中心に、広く浅くやっております…といいますか、むしろナナの方が知られていたり(^^;
(その他の神姫たちはこちら
最近は30数年ぶりにガンプラ熱再燃、旧ザクアメイジング作ったりとか妖怪グレイズ置いてけだったりとか。
あと、ミニ四駆も始めたてほやほや。

もし何かございましたらこちらまで、お気軽にどうぞ!
(スパム回避のため画像になっておりますので、ご注意くださいませ)

最新記事
検索フォーム
最新コメント
カテゴリ
ついった、やってます。
リンク
月別アーカイブ
最新トラックバック
RSSリンクの表示
QRコード
QR