不定期連載ノベル・第4回

 こちらは当ブログ開設3周年記念企画・不定期連載ノベルっぽいものの第4回です。これまでの展開はカテゴリ「三周年記念企画」でご覧になれます。
 既にバレバレだとは思いますが、作中のストラーフさんは“彼女”で、シュメッターリングは“アレ”です(笑)
 時期的にはだいたいアニメ第4話くらいの時期なのですけど、この頃の彼女は「そのフルポテンシャルを強いられるようなシチュエーション」に、意外と恵まれていなかったように記憶しております(まあアニメ自体、バトルの比率は全体的に少なめでしたが)。
 こうした事から、某伝説のニュータイプが作中初期にそうであったように「機体の性能頼りで戦っている」という事で、この時期では既にベテランの部類に属する“アレ”に比べて、今のところ聊か出し抜かれ気味の状況となっている訳です(まあ、ちょっと手前味噌の気は否めませんが……)。
 それでは、ご覧くださいませ。
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「ひななな-湘南神姫、かく戦えり-」第4回

 殺られた!と一瞬思った。
 それ程までに素早い、シュメッターリングの一撃。それはストラーフの脇腹を紙一重でかすめ、背後の岩に突き刺さっていた。
 ダメージはない。とっさの回避行動が、ここにきて功を奏した形である。それもストラーフ自身が“特別仕様”であったからこそ出来たようなもので、もし彼女が“プリセットデータそのままの神姫”であったなら、今の一撃であっけなく斃されていたかもしれない。
 一方、仕掛けた当のシュメッターリングは既にその場から大きく跳躍し、距離をとって着地していた。
 『およ。これもかわされたかぁ……』微笑みこそ朗らかだが、一連の攻撃はモチーフたる蝶というより、もはや蜂というべきものである。

 ともあれ危地を脱したストラーフは、疑問をとりあえずさておいて思案する。いかに相手が高機動特化型神姫である事を勘案しても、今見せた“らしくない”異常な加速っぷりは一体何だったのだろうか?と。
IMGP3006.jpg
 今や当てにできなくなりつつある戦闘データバンクを今一度照会してみたところで、標準機のプリセットデータの範疇にはまるで含まれ得ない機動、という結論しか出てこない。
 となれば、現状でヒントとなりそうなのは“相手の体躯”であろうか。ストラーフ自身にも採用されている標準規格に対して聊か小さな3S規格である分、相対的に機動性が上がっているという理屈である。
 しかし、そもそも神姫素体としての能力は、どの規格にしても数値上はひとまず対等。そこからの差異を決めるのは武装とプログラム、そして――ストラーフ自身には決定的に欠けている――戦闘経験、である。

 この段に到り、ストラーフは痛感する。
 これが彼我の“踏んできた場数の相違”であり、自分は本来最も重視すべきであったろうその点を、まるまる見落としていたのだと。

 だが、しかし。
 彼我の間にいかなる差異があろうとも、それが即勝敗に繋がる訳ではないのが戦闘の常。確かに経験と言う意味ではあちらに大きく譲るとしても、機体スペックの部分で言えばストラーフはちゃきちゃきの最新型神姫である。
 そして何よりも、彼女は自らを“誇り高き戦士”と位置づけてもいた。確かに今までの流れで聊か出し抜かれ気味だった事は否定できないものの、仮にも戦士たる者がこのような戦いで敗北を喫しては物笑いの種ともなろう。
 特に、他に3人いる同僚達のごく一部には、絶対に知られたくない。これは実のところ彼女にとって、ある意味最も切実な問題であった。
 ならば、この現状を打開し得る要素とは何か……そう考え直す間にも、シュメッターリングは岩場を駆け上がり、再度仕掛けてくる。
 『ちょわっ!』『むう…っ!!』小さな機械音を伴った、あの強烈な突撃で。
 コンマ数秒。それを再びからくもかわしつつ、ストラーフの演算素子は、この不確定要素に溢れた戦いの中に未だ見えないままの勝機を掴まんと、既に最大限の稼動を始めていた。

 彼我の経験差はもはやさておき、機動性という面における僅かな優位というだけでは説明の付かない相手の異常な機動について、まずは今一度洗い直す。
 先の攻撃直前に聞いた、あの異常な機械音。それは間違いなくモーターの駆動音なのだが、本来静音性に配慮がなされている筈の神姫のボディをもってあれ程の駆動音が出るような状況といえば、それこそ限界出力を出している時以外にあり得ない。
 加えて、今の攻撃もそうであったが、この相手は必ずゴムボールのように周囲の岩場を巧みに跳躍し、反動を付けてから仕掛けてくる。
 そこまで思索して、ストラーフはすぐに相手の攻撃の本質を見出す事ができた。それは周囲の環境に駆動系の限界出力を上乗せした、まさに渾身の打ち込みだったのだ。
 今までの挙動を見る限り、相手は数多くの神姫との交戦経験を経て、今のごとき機動を身に付けたのだろう。更に、もし彼女が地元の神姫であるならば、この場の地理条件について知り尽くしていても何らおかしくはない。
 しかし、こうして相手の攻撃における本質を見出す事ができた以上、考えるべきは「それをどう破るのか?」という事である。
IMGP3384.jpg
 目の前のシュメッターリングに用いられている3S規格という素体は―――当のストラーフも毎日のように同僚の1人に見ているのだが―――ただでさえ小さなMMS通常規格素体よりも更に“小さな体躯で通常規格素体と概ね同程度の性能を発揮する”というコンセプトがために、自然耐久性にしわ寄せの来る設計とならざるを得ない。
 それが、瞬間的にとはいえ過大な出力を連続して出している。このような戦い方はスペック以上の破壊力を発揮できる反面、駆動系のみならずボディ全体にも相応の負荷が掛かっているはずであった。
 通常の素体ですらそうなのだから、おそらく彼女のボディには「イリーガル」と呼ばれる違法改造機とまでは行かずとも、かなりの極端かつ細微な調整が施されているのだろう。

 逆に言えば「普通以上に無理がきかない」ともいうのだが。

 となれば、最適手は「持久戦」……相手の物理的疲弊を待ち、一気に畳み掛けるのが一番無難だという事はおのずと明らかなのだが、相手がすんなりそれを許してくれるとは思えないし、第一ストラーフ自身のポリシーにも見合わない。
 この神姫とは、正々堂々と戦って勝利したい―――それが、ここまで驚かせてくれた相手に対する武人としての礼儀であり矜持である。少なくとも彼女はこの段階で既にそう確信しており、それが故に「無難に勝つ」というかの選択肢は、思考のおおよそ最初の段階で放棄していた。
 となれば、次に狙うべき手は「リバーサル」……仕掛ける角度こそ異なるとはいえ、周囲の岩場を利用している以上、限界までの出力を出せる条件など限られている。よって、その位置関係と角度とを計算しておけば、例えどこから襲ってこようと対処する事は不可能ではないだろう。
 そして何よりもそれは、自身のポリシーにも合致する。

 いかにその知識を活かすだけの経験を欠くとしても、戦闘に関する行動と言う意味でストラーフに使われている演算素子は、間違いなく最新鋭かつ優秀なものである。現に彼女は、これまでの立ち回りでシュメッターリングが使用した岩場の場所、跳躍および突撃の角度を計算し、いくつもの事前予測をここまでの思索の時点で立てていた。
 先程までの旋風のような戦いとは一変し、今は互いに距離をとった状態で睨み合いとなっている。
 『キミは……強いな』『そうでも、ないよ』
 『でも……勝つのは、私だ』だからこそ、不敵に笑う。

 当初以来に抱いてきた、様々な懸念はいまやない。ただ次の一撃を、冷静に、的確に当てるのみ。
 ―――だが、その“次の一撃”は予想だにもしない方向から、他でもないストラーフ自身に襲い掛かるのだった。


【おことわり】
 この物語はフィクションです。実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
 また、この物語は「武装神姫」シリーズ関係の二次創作物であり、同シリーズの公式設定等を基にしてはおりますが、作者の解釈により若干の差異の生じる可能性がありえます。
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プロフィール

翠騎

Author:翠騎
日々を趣味の探求に生きる旦那芸の人。

神姫オーナーとしてはパートナーのシュメッターリング3rd改「ナナ」を中心に、広く浅くやっております…といいますか、むしろナナの方が知られていたり(^^;
(その他の神姫たちはこちら
最近は30数年ぶりにガンプラ熱再燃、旧ザクアメイジング作ったりとか妖怪グレイズ置いてけだったりとか。
あと、ミニ四駆も始めたてほやほや。

もし何かございましたらこちらまで、お気軽にどうぞ!
(スパム回避のため画像になっておりますので、ご注意くださいませ)

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