不定期連載ノベル・第3回

 こちらは当ブログ開設3周年記念企画・不定期連載ノベルっぽいものの第3回です。これまでの展開はカテゴリ「三周年記念企画」でご覧になれます。
 既にお気づきの方もいらっしゃると思いますが、このお話はアニメ版の設定を基に、独自設定を盛り込んだものとなっております。
 特に、アニメ版で明らかな説明不足であろうかと思われる描写については、筆者なりの考証による補完を試みましたが、お楽しみいただけたなら幸いです。
 それでは、ご覧くださいませ。
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「ひななな-湘南神姫、かく戦えり-」第3回


 『ハーモニケインっ!』シュメッターリングが掛け声を上げるや、その手に光が集まり、得物が構成されていく。
 この一見魔法のように見える現象だが、実は近年の神姫事情においてはさして珍しいものではない。

 量子力学に基づき、神姫の専用武装を展開・装着、あるいは解除・送還する機能およびその制御プログラム。神姫の持つGPS端末機能を利用しており、神姫自身の電力を使用して任意に制御・発動する事が可能なこの最新鋭システムは、短く詰めて「電送」と呼ばれる。
 予め専用設備に武装を登録しておく必要があり、神姫本体の残存電力が不足していたり、電波の届かない場所ではまったく役に立たないといった数多くの課題こそ残っているものの、先に記した公式戦レギュレーションの変更によって認可され、現在販売されている多くの神姫達の間で広く実装されている機能である。
 ちなみに古参のオーナー層からは概ね「邪道」と忌避されてはいるものの、この場にいるストラーフ自身のオーナーはかの設備を普通に保有・運用しており、彼女が知己とする神姫たちについても、これは概ね例外ではない。

 それにしても、なんとも珍妙な武器を電送してきたものである。
 「ケイン」というからには杖なのだろうが、その長さたるやほとんどバトン。シュメッターリングらしい白と桜色の可愛らしいカラーリングと意匠を持ってはいるものの、さりとて激しい戦闘に耐えられそうなものには見えず、更に指摘するならば色合わせこそしてあるものの、そもそもデータバンク上に存在するシュメッターリングの標準武装には存在しない代物だ。
 しかしである。『モード:レーザーっ!』続けてのコールに従い、その底部にある珠状のパーツから桜色をした光の刃が発生したのだ。
 レーザーソード。主にアーンヴァル系列機などが、接近戦用に実装している武器である。ストラーフが現在構えている“コーシカ”等の実体刀剣に対し威力こそ数段落ちる反面、重量が軽く取り回しやすいと言う利点がある。
 お世辞にも格闘戦用機とは言い難いシュメッターリングが扱うにしては、上出来な武装と言えた。

IMGP3374.jpg
 見た事もないような武装とはいえ、こうして兎にも角にも相手が“丸腰”ではなくなった以上、ストラーフにとって当初抱いていた気後れのようなものは一切無くなった。
 『……これで、心置きなく戦える』既に彼女は体勢を立て直し、目の前でにこやかに微笑む神姫に、その切っ先を向ける。
 次は、倒す。

 『やる気になってくれて嬉しいな。それじゃ、行くよっ』蝶型神姫が構え、そして駆けた。
 一瞬の後一合、そしてまた一合。桜色のレーザーと、蒼き光を帯びた刃とが打ち合わされ、細やかな火花が飛び散る。

 それはしばしの間、辺り一帯、つまり磯のあちこちで繰り返された。何も知らない者が見れば、それこそ癇癪玉か鼠花火の類と思う事だろう。
 立ち回りが繰り返される事数度、戦況は今のところ伯仲している。
 元より白兵戦特化機の系譜を汲むストラーフは、素体状態にあってもなお発揮できる出力面において優位を示す。現に不安定な岩場をものともせず、振り下ろされるレーザーソードを力のもとに“コーシカ”で打ち返し、そのまま斬り伏せんとするのだ。
 一方のシュメッターリングが優れているのは機動性。迫る白刃を前にレーザーソードの出力を瞬間的に切り、生じた隙に最低限の動きをもって回避。のみならず周囲の岩場を利用して巧みに跳躍し、あらぬ角度から幾度となく反撃を試みる。
 実力的にどちらが優れているとも、劣っているとも言えない。ただ、どちらも相手に決定打を与えていない事には間違いなく、まるでテニスにおいて長々とラリーが続くかのごとき状況が続いているのだった。

 当初相手を一撃のもとに倒す事を考えていたストラーフにとって、これは甚だ予想外の状況である。だが実のところ、彼女にとってこれは望ましい状況でもあった。
 というのも、そもそも彼女のマスターはバトルに対して然程積極的ではなく、あろう事か「危ないからね」と制してくる有様。彼に従う他の神姫たち、つまり彼女にとっての同僚たちも――これは神姫である以上、当然ではあるものの――そこに、疑問すら呈そうともしない始末である。
 結果、彼女がこれまでに経験したバトルは、そのいずれもが今回のように“偶発的な野良バトル”同然のものとならざるを得ないのだった。
 更に悪い事に、彼女は今までの間に“全力で戦った”経験を持っていない。先の事情も含めればある程度やむない話ではあるものの、隣宅のケモテック製神姫2人組とのバトルはおままごとも同然だったし、先日戦ったオーメストラーダ製神姫2人組などは起動直後の状態であり、それらに対する戦果などは彼女にとって、到底満足できるものではなかったのだ。
 戦うための力と知識とを生まれながらに併せ持ち、それらをもって自ら武人たらんと誓いを立てながらも、発揮する機会をまるで得られていないというジレンマ。
 ――それこそが、この江ノ島に来て以来ストラーフがずっと不機嫌だった原因の根幹であった。

 そして、その果てに起きた今回の戦いである。
 発端自体は以前のケースと似たようなものにも感じられ、正直腹立たしい部分も否めなかったが、しかしながら今となってはこの戦いそのものが、従来とはまったく違う展開である事をも認めざるを得なかった。
 いまだ素体状態同士での戦いであるという事こそ不満が残るものの、レギュレーションによるハンデだとでも思えば苦にもならないし、そもそもこのシュメッターリングは自身の動きによく追随してくるばかりか、時として凌駕してさえくる。
IMGP3375.jpg
 そんな相手の仕掛けと挙動を返り討ちにしてみんとする試みすら、今のところ完全に成功してはいないものの、それを行う事そのものがこれまた、愉快でたまらない。
 結果、ストラーフは今までに得る事のかなわなかった“戦闘の愉悦”を、期せずして堪能していた。

 ―――マスターには叱られるかもしれないが、やはりバトルは楽しい―――
 そう認識を深め、口元を綻ばせざるを得ないのが、今の彼女だった。

 ただ、そうして満足を得るうちに、今度は目の前のシュメッターリングに対する疑念が不意に生じてくる。
 彼女は何故、バトルを申し出てきたのか。否、それ以前に彼女はいったい何者なのか……そう意識に浮かんだその刹那、戦況は突如として変化する。
 『しまった!?』小さな機械音が響き、ストラーフの脇腹には桜色の輝きが閃いた。


【おことわり】
 この物語はフィクションです。実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
 また、この物語は「武装神姫」シリーズ関係の二次創作物であり、同シリーズの公式設定等を基にしてはおりますが、作者の解釈により若干の差異の生じる可能性がありえます。
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プロフィール

翠騎

Author:翠騎
日々を趣味の探求に生きる旦那芸の人。

神姫オーナーとしてはパートナーのシュメッターリング3rd改「ナナ」を中心に、広く浅くやっております…といいますか、むしろナナの方が知られていたり(^^;
(その他の神姫たちはこちら
最近は30数年ぶりにガンプラ熱再燃、旧ザクアメイジング作ったりとか妖怪グレイズ置いてけだったりとか。
あと、ミニ四駆も始めたてほやほや。

もし何かございましたらこちらまで、お気軽にどうぞ!
(スパム回避のため画像になっておりますので、ご注意くださいませ)

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