不定期連載ノベル/第2回

 こちらは当ブログ開設3周年記念企画・不定期連載ノベルっぽいものの第2回。これまでの展開はカテゴリ「三周年記念企画」でご覧になれます。

 さてさて、前回出会った2人の神姫。果たしてどんな成り行きとなりますやら…まずは、ご覧くださいませ。
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「ひななな-湘南神姫、かく戦えり-」第2回


 2人の神姫は向かい合っていた。片や岩場の上、片やその下。
 漣が打ち寄せる音だけが、しばし響いていた。

 『………何か、用か』先に口を開いたのは、ストラーフの方である。
 彼女はそれまでの間、目の前の奇妙な闖入者を、品定めでもするかのように見据えていたのだが。

 実のところこのストラーフ、ただのストラーフではない。
 製造元・フロントライン社が手ずから開発した特殊な神姫バトル用プログラムが組み込まれた、ある意味特別な個体なのである。
 そのプログラムは無論ひとつやふたつではなく、実のところ昨年度までの神姫バトル世界大会の試合データから構成された潤沢なデータバンクが含まれている。それらを駆使して、彼女は目前の神姫が的確なバトル相手足りうるかどうか、考察と言う名の内部演算を続けていたのだ。

 先にも見たとおり桜色の髪をした、着衣姿の神姫である。頭部についたリボン状の白いコンデンサユニットからして、蝶型・シュメッターリングであろうか。見たところ標準機に比べて体躯が小さいようだが、おそらく3S規格のボディフレームを使用したカスタム機の類だろう。
 シュメッターリングといえば、リリース当初そのアイドルを思わせる可憐さと特殊な用途・スペックから一時期話題となったものの、近年あった神姫バトルレギュレーションの大幅な変更によって、公式大会からは姿を消して久しい。
 現在では、ほんの少数が所謂“職業神姫”として芸能界で活動している他、その能力特性を活かして宇宙開発に従事している個体すらあると伝え聞くが、いずれにしても彼女が求める“対戦相手”としては、スペック的に見ても明らかに「力不足もいいところ」のレベルだろう。

 そこまで結論付けてから、ストラーフは口火を切ったのである。
 よってその言葉は、物理的に同等な“神姫”という存在に対してどころか、まるで単なる障害物に対して発するかのようなニュアンスを持っていた。

IMGP3366.jpg
 それでも、目の前の“シュメッターリング”は物怖じするでもなく、逆にその言葉をこそ待っていたかのように、ひらりとストラーフの脇へと降り立つ。
 『んーん、別に?』これはまた、事もなげな返事である。しかし、ストラーフにしてみればさながら不機嫌の火に、更なる油を注ぐかのようなものではあった。

 『用がないならあっちに行け。非戦闘神姫とやり合う程、私は暇じゃない』その手にした刀“コーシカ”のごとき冷たく鋭い視線と共に、青き髪の神姫は溜息と共に言い放つ。
 だが、これで立ち去ってくれるだろうと言う彼女の観測を、目の前にいる桜色の髪の神姫はまるで意にも介さない。

 『……ん~…ヒマ?』それどころか、何やら腕を組んでこちらを見ている有様。寧ろ、ストラーフ自身の現状に対して、鋭い指摘をしているようだが、単に莫迦にしているようにも見える。
 確かに、先刻から打ち寄せる波に向かって只管刃を振り下ろし続けていただけのストラーフは、傍から見れば“何かを持て余している”風である。実際のところ全く以ってその通りなのだが、だからと言ってその事実をダイレクトに指摘されるのは、同型機の例に漏れずプライドの高い性格を持つ彼女にとって、業腹というものであろう。

 『一体、何が言いたい……』と、苛立ち半分で言いかけたその矢先。
 『……もしかして、バトルをしたいのかな?』的確に、ざっくりと返されてしまった。

 『む……ッ』『ふぅん、図星かぁ……』
 言い当てられて言葉に詰まるストラーフの表情に、明らかなまでの憤りの色が浮かぶのを見て、シュメッターリングは得心したかのように何度か頷き、その正面へとゆっくりと歩いていく。
 そして。『……よし』海を背景に立ち止まった桜色の髪の神姫は、何かを決心するかのように今一度頷き、そして目前の話し相手に向かって、こう切り出した。

 『やろっか?』『……は?』いきなりの反応に、ストラーフの表情は毒気を抜かれたかのような呆けたものへと一変する。
 そこまでの一連の思考の間、件の理由で最初に切り捨てた選択肢を、先に持ち出されたのだ。しかも、明らかなまでの非戦闘神姫に。
 意表を突かれた、というべきだろうか。

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 『やりたいんでしょ、バトル? いいよ、相手になる』対するシュメッターリングの表情はあくまで朗らか。まるで、その辺の店へとお使いにでも行くかのようなお気軽さだ。
 『そうか……こういう成り行きは本意ではないが、挑戦されたからには受けざるを得ん』こちらもそれなりに納得したらしきストラーフ、その意識を平時から戦時のそれへと高揚させる。
 といってもその言葉に嘘はない。個人的にはまったくもっていやいやながらではあったが、非武装という事も相俟って、先程からこちらを小馬鹿にしているようにも見えるこの相手。少し痛い目を見せてやればすぐに反省もするだろうと見通しを立てたのだ。
 『だが、安全は保証しないぞ?』だからこその、一応の念押し。
 『上等っ☆』返事は、それだけ。

 かくて2人の神姫は向かい合う。かたや抜刀して、かたや手ぶらで。
 漣が打ち寄せる音だけが、しばし響く。

 『やッ!!』裂帛の気合を込めて、ストラーフが突きを繰り出した。大抵の神姫ならばまず避ける事も能わない、必殺の一撃。
 しかし……彼女は次の瞬間、軽い驚愕を覚えたのである。

 シュメッターリングは、かの一撃を事もなげに躱していた。
 それも普通にかわしたのではない。繰り出された攻撃に対し敢えて一歩前に踏み込み、身を沈み込ませて間合いをずらしたのだ。
 正確な攻撃は、その正確さ故にこそ却って軌道を読まれやすいものである。ストラーフにしてみれば“一撃で終わらせる”と言う意思がそうさせたのだが、またしても彼女は意表を突かれる形となる。
 のみならず。この桜色の髪の神姫は、入り込んだ相手の懐で、その刀の鍔を狙って手の甲を跳ね上げてくるではないか。

IMGP3370.jpg
 『こいつ……ッ!?』瞬時にその意図を読み取り、刀ごと身を捩るストラーフ。あと一瞬遅かったら、愛刀をあっさりと奪われていたところである。
 飛びずさって一旦間合いをとり、そして確保した僅かな時間で思索する。
 今の一連の回避からの反撃は、明らかに“初期設定通りの神姫の動き”ではないし、ましてや彼女がデータとしてのみ知る“蝶型神姫らしい動き”でもない。
 明らかにいくつもの修羅場を踏んだ、手練の動きだ。にも関わらず。

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 『あら~、うまくいくと思ったんだけどなぁ。失敗失敗♪』ぺろりと舌を出す対戦相手の表情からは、相変わらず戦いへの緊迫感がまるきり感じられない。
 その事実を前に、ストラーフはある意味戦慄し、またある意味で高揚感を覚えていた。
 彼女の持つ潤沢な戦闘データのいずれにも当て嵌まらず、そしてその規格外な戦闘力をおくびにも出さないこの“敵”。彼女はこの先、どのような戦いぶりを魅せてくれるのだろうか。
 そして、自分は戦士として、いかにそれを打ち砕くべきか……そもそも、打ち砕けるのだろうか?

 『……じゃ、今度はこっちからいこっかな』
 桜色の髪の神姫は、にこやかにそう言った。

【おことわり】
 この物語はフィクションです。実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
 また、この物語は「武装神姫」シリーズ関係の二次創作物であり、同シリーズの公式設定等を基にしてはおりますが、作者の解釈により若干の差異の生じる可能性がありえます。
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プロフィール

翠騎

Author:翠騎
日々を趣味の探求に生きる旦那芸の人。

神姫オーナーとしてはパートナーのシュメッターリング3rd改「ナナ」を中心に、広く浅くやっております…といいますか、むしろナナの方が知られていたり(^^;
(その他の神姫たちはこちら
最近は30数年ぶりにガンプラ熱再燃、旧ザクアメイジング作ったりとか妖怪グレイズ置いてけだったりとか。
あと、ミニ四駆も始めたてほやほや。

もし何かございましたらこちらまで、お気軽にどうぞ!
(スパム回避のため画像になっておりますので、ご注意くださいませ)

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